会長挨拶

当会のホームページをご覧いただきありがとうございます。

私たちは、学校歯科保健を推進する立場から児童・生徒の生きる力を支える事業を展開しております。この「生きる」ということを「生物とは何か」という切り口で考えると、それは今もなお答えが定まらない奥深い概念なのです。この「生物」に関して青山学院大学分子生物学の教授で作家でもある福岡伸一先生がご自身の著書の中でたびたび引用されている、アメリカの生化学者ルドルフ・シェーンハイマーの残した業績があります。それは、口から食べたものは胃や腸で栄養を抜き取られ残ったものが外に排出されているのではなく、一度は分子、原子のレベルまで分解されて消化、吸収され、そして瞬く間に体を作っている細胞の分子、原子と置き換わっているという発見です。福岡氏はこれを生物の新しい定義と解釈し「動的平衡」と表現しています。昨日の自分も今日の自分も同じ自分であると思っているのに、物質レベルでは毎日新しく入れ換わっている別の自分なのです。

いささか論理は飛躍しますが、この「動的平衡」という営みを歯科的に見ると、歯と口が健康でないと消化も吸収もままならないという事に気づきます。こと、育ち盛りの児童・生徒においては、健康な口腔は生きるために最も重要なファクターの一つと言えるでしょう。このことを肝に銘じて、児童生徒が生きる力を育めるよう当会の役割を遂行してまいります。私たちの調査、研究で得た情報は、このホームページに掲載してまいりますので、今後も定期的に訪れていただければ幸いです。

令和5年6月
公益社団法人 東京都学校歯科医会
会長 鈴木 博